CREPOS | スペシャルクリエーター 松尾 達

松尾 達2013/04/30 更新

インタビュー

インタビュー

2013/04/24 文:成尾
イラストを描き始めたのはいつ頃ですか?

昔から絵を描く事が好きで、よく授業中に落書きをしていました。 仕事として意識して描き始めたのは、劇団在籍中からです。

――授業中の落書き、このコーナーでも定番回答のひとつです(笑) さて、冒頭から劇団という気になるワードが出てきました。 劇団でイラスト…というとポスターやチケットのデザインしか出てこない発想が貧困な聞き手で恐縮なのですが、イラスト という側面では、どういうお仕事が多かったのでしょうか。

劇団でやっていた平面的な仕事は主に、成尾さんがおっしゃるようにポスターやチラシのイラストレーションであったり、舞台装置の色塗りであったり、イベントの看板なんかも描いたりしていました。 劇団のトラックの側面に絵を描いたりしたこともありました。 今はデジタルで絵を描く事が多いのですが、劇団での仕事は実際に絵の具を混色して筆で色を付けていました。 3m×5mの舞台の幕に絵を描いたこともあって、その時は死ぬほど大変でしたけど貴重な体験でした。

――小さなものから大きなものまで、いろいろな制作を行われていたのですね。 トラックの側面なんて、舞台に携わっている方にも滅多にないキャンバスではないでしょうか。 自分の描いた絵が公道を走っているところを想像すると、ドキドキしてしまいます。

トラックの側面の絵のように、劇団在籍中は色々な種類の制作に携われて、貴重な経験を得ることが出来て良かったと思 います。

イラストレーターになろう!と思ったのは何がきっかけですか?

美大を卒業して上京し、人形劇団の美術スタッフとして3年勤務しました。 そこでは人形の頭を彫ったり、舞台美術のデザインの仕事など、どちらかというと立体の仕事が多かったです。 そこでの仕事も楽しかったのですが、同時にイラストレーションを仕事としてやってみたくなり、退団してフリーのイラス トレーターになりました。

――劇団では立体制作が中心だったということですが、学生時代から興味がおありだったのでしょうか? 上京されたということは、なにか目的意識を持って就職されたのかなと思ったのですが。

もともと大学ではグラフィックデザインを専攻していましたが、 課題によっては立体も作っていたので、あまり平面と 立体で分けて考えている意識はありませんでした。 同じ専攻の同級生はデザイン事務所などに就職したのですが、当時あまりデザインの仕事にはピンと来ていなかったので、 卒業後は平面立体問わず、なにかもの作りができる仕事がしたいと思い就職活動をしていました。 そして美術スタッフの求人を出していた人形劇団(人形劇団プーク)に出会い、面白そうだと思って面接を受け、その後採用して頂き上京しました。

――最初の動機は、総合的な「ものづくり」への興味だったのですね。 それからイラストに焦点を絞っていかれたのは、先ほどお話にあったチラシなどの制作経験が大きいのでしょうか。

それもありますが、それよりも大きかったのは立体の制作をしているうちに、やっぱり絵を描く方が向いてるなと再発見 した辺りからイラストレーションへの興味が大きくなっていった気がします。

――なるほど、先ほどお話にあったような様々な制作を通じて、興味が取捨選択されていったんですね。
制作するときは、何を使用していますか?

線画はアナログ、着彩や加工はデジタルという形が今の所多いです。

――線画はアナログだったのですね。パキッとした黒が印象的だったので、すべてデジタルなのかなと思っていました。 ペン入れのツールにはなにをお使いなのでしょうか?

マーカー、マジック、ボールペンなどいろんな種類や太さを試行錯誤して使っています。 黒ベタをよく使うのは、アメコミや漫画の影響があるからかもしれません。

――アメコミ的な色選びや、トーン風の処理を巧みに取り入れていらっしゃいますよね。 最近はサインペンなんかも種類が増えて、漫画家さんにもつけペンから移行されている方がいると聞きます。 松尾さんお気に入りのペンがあったらおうかがいしたいです。

あるメーカーの筆風サインペンなんですが、きれいな黒色の線が引けるので重宝していて、常に何本かストックしています。

――ストックするくらい馴染んでいる画材があるのはよいですね。 「これだ!」という画材との出会いは、創作のモチベーションにも繋がるように思います。
制作時に心がけていたり、気をつけているところはどこですか?

一枚のイラストレーションの中で「自分が好きな部分」と、「仕事として求められている部分」のバランス配分に気をつけています。

――「自分が好きな部分」というのは素敵ですね! 描いている方が張り切った個所があると、やっぱり魅力が増すように思 います。 主観としてで構わないのですが、松尾さんのイラストは、お仕事の際にどんな要素を求められることが多いのでしょうか。

「シュールさ」や「ゆるさ」と言った要素を求められる事が多い気がします。はりきって力を入れて描きすぎると 「ラフの方が良かった」とよく言われるので、良い意味で「適当さ」を忘れないように気をつけています。

――確かに、匙加減が難しいですね。 上手な肩の力の抜き方を覚えることは、イラストだけに留まらず、様々な仕事をする上で実は大切な要素のように思います。

誰の言葉だったか忘れましたが「手を抜かず、力を抜く」という言葉をふと思い出しました。 たしかにこの仕事に限らず大事な事だと思います。

――「手を抜かず、力を抜く」言い得て妙です。円熟味を感じますね。
どんな時にアイデアが浮かびますか?

散歩中や電車の中など、家の外で浮かぶ事が多いです。 家の中だと出そうと思わないとなかなか出ません。

――移動中の風景なんかはよい刺激になりますよね。 「どうしても書かなきゃいけない!」というときはやはり外に出られますか? それとも机の上で捻り出す感じでしょうか。

やっぱり外に出ます。気分を変えて喫茶店やファミレスでアイデア出ししたりも時々します。 ある程度アイデアが出たら、あとは家にこもって黙々と描きます。

――喫茶店やファミレス、いかにも作家という感じでいいですね(笑) 仕事用の環境を用意すると、切り替えもスムーズに行く気がします。

切り替えは確かに大事だと思います。 今は住居と作業場が一緒なので、ちゃんと切り替えないとゴロゴロしてしまうので… 仕事と普段の生活の切り替えには、掃除や洗濯をして、切り替わり易いよう工夫しています。 家事を上手く使ってらっしゃるのですね。よいライフハックをうかがいました!

これから描いていきたいと思うものはありますか?

今まで描いた事無いようなモチーフやネタを、意識的に描いていきたいです。

――今現在、松尾さんご自身が得意とされているというか、親しみのあるモチーフはありますか? サイトを拝見すると、昔話のオマージュなどがあって、人形劇の影響なのかなと思ったりしたのですが。 マッチ売りの少女の勢いがものすごく好きです(笑)

ありがとうございます(笑)昔からおとぎ話は好きで、モチーフとしてよく描いています。 おとぎ話だったら、大抵の人がストーリーやキャラクターを知っているので、それにちょっとずらした要素を与えてみると 面白い絵になっていく事が多いです。パロディ化が成り立ち易いモチーフなんだと思います。 ただこれからはストーリーに甘えず、もっと絵自体におかしみがある絵を描いていきたいです。

この仕事をやっていて良かったと思うことはありますか?

延々と絵を描ける事。よくも悪くも自分のペースで仕事ができる事。

――時間の使い方を自分で決められるというのは、フリーで活動される方の特権ですね。 このお仕事は夜の方が集中できる!という方もいらっしゃいますが、松尾さんはいかがでしょう?

完全な朝型です。夜は眠くなってしまうので早々に寝てしまいます。

――健康的で素晴らしいと思います…。 「延々と絵を描ける事」というのも、ときめくご回答なのですが、普段描かれている量でいうと、お仕事の絵と趣味の絵の 割合はいかほどでしょう? 個人的な楽しみで描かれる絵は多いですか?

今はあまり仕事の量もそう多くないので、半々くらいでしょうか。 個人的な楽しみの絵(落書き)は多いと思います。

辛いと思ったことはありますか?

幸いな事に、特に今のところ無いです。お金がない事ぐらいでしょうか。

――現在はイラストレーター一本で活動されているのでしょうか?

アルバイトと掛け持ちしている状態です。 早く本業一本で食べていけるよう精進しています。 ただアルバイトも気分転換になったりするのでそんなに辛くもないです。 ある程度別の作業をすることで、出てくるアイデアもありますものね。 学生時代、むしろ授業中に妄想が膨らんでいたことが思い出されます。

――そうなんですよね、そういう時に限って脳みそのキレが良い気がします。
影響を受けたり、尊敬しているイラストレーターやデザイナーは?

漫画家ですが荒木飛呂彦、朝倉世界一が好きです。

――おお、イラストの方向性としては両極端な感じですね。 荒木飛呂彦さんは最近別の方にインタビューしたときも名前が上がりました。 お二方の作品はいつ頃から読まれているのでしょうか?

シュールさは荒木先生、ゆるさは朝倉先生の影響でしょうか。 姉がやってた進研ゼミのおまけ漫画に朝倉先生の連載漫画があって、それが好きで読んでいたくらいなので読み始めたのは 中学生ぐらいだと思います。 まだスクラップしてとってありますが、その連載漫画はまだ単行本化してないので宝物です。 ジョジョの奇妙な冒険は意外と遅く、大学入ってから偶然入った古本屋で12巻セットを手にしたのが運命の出会いでした。

――ああ、進研ゼミ! 学習教材の漫画って単行本出ないので貴重ですよね。 小中学生の頃に何気なく触れたものが、創作の原点になっている方は多いのではないかと思います。 ジョジョについては、最近別の方のインタビューでも話題となりました。 大学生くらいだと、バトルものとしてだけじゃなく、哲学的な部分も楽しめるようになって刺さるのかもしれません。

表面的には分かりにくいですが、創作の面に影響されてる部分は確かにあると思います。

ペンネームの由来を教えてください。

本名です。「達」と書いて「とおる」と読みます。 よく読み間違えられます。

――オーソドックスな漢字ながら、読みが珍しいというのは印象的で素敵だなと思います。 一度尋ねたら忘れない感じもします。

ありがとうございます。

これからの夢、目標を教えてください。

昨年の売り上げをちょこっとでも上回ることが小さな目標です。 沢山絵を描きたいです。

――堅実ながら、ひたむきな目標で素敵ですね。 目先の夢が目標、大きな目標が夢、なんてことも聞きますが、5年後10年後の野望というのはありますか?

今は趣味で漫画を描いていたり、アニメーションもやってみたい、キャラクターデザインとかもやりたい、といろいろ手 を出している状態です。 色々自分から発信していって、そこからいろいろ反応があると面白いですし、やりたいやりたいと言ってたらどこかで縁が 回ってくるかもしれません。 5年後10年後も色々新しい事に手を出していてほしいなと思ってます。 あとイラスト以外にも色々興味を持っていきたいです。 イノシシなどを罠で捕まえる「わな猟」をやってみたくて猟友会にも問い合わせてみたりと、若干よく分からない方向にも 手を出しつつありますが… どなたか猟師をやっている知り合いの方いらっしゃったら教えてください(笑)

――まずは絞らないで試してみる時期なんですね。 やりたいことや好きなものを口に出すことは、本当に大事だと思います。 何気ない会話でも誰かが覚えていて巡り合ったりして…自分の中に留めておくのはもったいないですよね。 そしてわな猟!? それも既にアクション済みでいらっしゃる!? 残念ながら知り合いはいないのですが、「イラストレーター兼猟師」なんて肩書き、それだけで魅力的なのでぜひ実現して いただきたいです。

色々頑張ります。

――及ばずながら応援しています!
最近夢中になっていることは何ですか?

いなり寿司を作る事に凝っています。

――いなり寿司! 油揚げの大きさや形も、地方によって全然違いますよね。 画一化されるようでいて、思い浮かべる味が十人十色のようなします。

たしかに料理にはその人の育ってきた背景が出てくる気がします。 自分は食べる事が好きなので、だいたい自炊です。 いなり寿司以外にもロールキャベツや餃子を作ります。 料理している時は無心になれるのでいい気分転換になります。 このあいだは煎餅を焼きました。

――ええっ、お煎餅ってすごく手間のかかるイメージだったのですが…。 お話うかがってると松尾さん軽く小料理屋が開けそうです。わな猟といい、趣味と興味の幅が広くていらっしゃいますよね。 今まで他にも色々なチャレンジをしてこられたのではないでしょうか…。

いえ、むしろ無趣味なほうです。熱しやすく冷めやすい方かもしれません。 長く続いてる趣味は読書と散歩くらいです。

――あれ、そうなんですね。 でも、長く続いている趣味があるうえで、たまに熱中できる別のことが舞い込んでいると、人生に緩急がついて楽しそうです。
これからイラストレーターになりたい人へ、アドバイスをどうぞ。

楽しんで絵を描いてください。

――シンプルでいて初心に立ち返るような、静かで熱い言葉だと思います。 松尾さんご自身は、楽しめずに筆が止まってしまったことっはありませんでしたか?

そういうときは風呂に入って早々に寝てしまって、明日の自分に任せてしまいます。 それで大抵のことは楽しくやれる気がしてます。

――悩みすぎないで一回リセット、が、松尾さん流のコツなのですね。 朝型の件といい、自炊といい、見習いたいような生活スタイルです…。 もちろん大変なこともあるかと思うのですが、“楽しむ”気持ちが原動力になっている方は強いと思います。

これからも楽しむことを大切にやっていきたいと思います。

――ご活躍をお祈りしております! インタビューありがとうございました。

From Staff

まるで都会に暮らす仙人と対話をしているよう? どこかシュールながら親しみやすい、不思議なつかめなさをお持ちの松尾達さん。作品にもお話にも、ユーモアがたっぷりです。びっくりする単語が次々に飛び出し、楽しく翻弄されたインタビ ューでした。
ご自身の中で、物事に対するバランスを取られるのが巧みな印象。人形劇団の美術を経てイラストレーターへ転向されたと いうことで、飄々とした雰囲気の中にも、つかんだ選択肢に対する一本の軸が感じられます。 実際にはご苦労や悩まれることもあるのではないかな、と思うのですが、それを感じさせないやりとりに魅力を感じました サイトに掲載されている作品や漫画もとても楽しく、私個人ももはやただのファンになりつつあります。独特なテンポと味 が光る作品たち、ぜひご注目ください!(成尾)

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Profile

松尾達
イラストレーター
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(有)人形劇団プーク退団後、フリーのイラストレーターに。シュールで変な物が好きなので、描く絵も変な絵が多いです。 東京都在住。好物はあんこ(どちらかといえば粒)。